今月お薦めの1枚~ジャズ・ヴォーカル編は、1950年代末から1990年代末まで、40年以上にわたり、ジャズ・ヴォーカリストとして活動したロレツ・アレクサンドリアが、1964年34歳の時に発表してジャズ界で高く評価され、生涯で遺した30枚以上のアルバムでは名盤の一つとして称されることも多いアルバム『Alexandria the Great(アレクサンドリア・ザ・グレート)』を選びご紹介したいと思います。
ロレツ・アレクサンドリアは1929年に、アメリカ イリノイ州シカゴで生まれました。祖父母が聖職者で、家族の殆どがゴスペルや聖歌を歌う様な音楽的な環境の中で育ち、ロレツ自身も早くから地元の教会の合唱団に入り歌い始め、やがてゴスペルなどをレパートリーにするアカペラのグループのメンバーとしてシカゴ周辺へアメリカ中西部へ公演ツアーもしていた様です。その後は、シカゴのいくつかのジャズ・クラブでジャズも歌い始め、徐々に地元での人気が高まり、その内にシカゴのジャズ界で影響力の有ったピアニスト兼バンド・リーダーのウオルター・キング・フレミングと共演する様になり、ますます名声は高まって行き、その間 に当時まだ地元の独立レコード・レーベル で有ったArgo Recoredsから初めてレコードも発表しています。
そして1957年28歳の時にメジャー・レーベルのKing Recordsと契約し、同レーベルからウオルター・キング率いるグループとの共演で初アルバム「This is Lorez with the King Fleming Quartet」を、翌年には「Lorez Sings Pres」と立て続けにアルバムを発表しました。
特に2枚目のアルバム「Lorez Sings Pres」は、ジャズ・サクソフォンの巨人レスター・ヤングへのトリビュート・アルバムで、レスターが好んで演奏した、「Polka Dots And Moonbeams」や「There Will Never Be Another You」等のスタンダード曲を堂々と歌い上げたロレツ・アレクサンドリアの歌唱力は、ジャズ界で高く評価され、後にジャズ・ヴォーカリストとしての名声を高めて行く礎になります。
その後も、ロレツ・アレクサンドリアは契約していたKing Recordsから1959年までに、2枚のアルバムをリリースします。 この内、アルバム「 On The Band Swings」では、初めてフル編成のオーケストラをバックに、スキャット唱法も駆使し、ジャズ・ヴォーカル界の先輩格のサラ・ボーンやカーメン・マクレエにも通じる声質で歌唱を繰り広げており、このアルバムもジャズ・ファンの中では人気を博しました。
続いて契約したレコードレーベルArgo Recordsでは、同郷シカゴ出身のジャズ・ピアニスト ラムゼイ・ルイスのグループと共演したアルバム「Early in The Morning」を先ず最初にリリースしますが、ラムゼイのブルース・フィーリング溢れた演奏に呼応するかの様な歌唱を展開し、このアルバムもジャズ界では当時高い評価を得た様です。
このArgo Recordsでは、当時人気を博していたジャズ・トランペッター ハワード・マギーとの共演アルバム「Deep Loots」等、3枚のアルバムを録音・発表しましたが、その後、1964年には更にジャズ界での活動の幅を拡げるために、故郷の中西部シカゴを離れ、西海岸ロサンゼルスに移住します。
ロサンゼルス移住後は、同地の Parisian Room や Marla's Memory Lane等の著名ジャズ・クラブでの出演を重ねて人気を博した結果、同じカリフォルニア州サンタモニカで生まれ、ジョン・コルトレーン等著名ジャズ・アーティストとも契約していたジャズ専門レーベルImpulseと1961年に契約を結びました。
このImpulseレーベルでは、今回ご紹介する「 Alexandria the Great」、そして「More of The Great Lorez Alexandria」を立て続けにリリースし、ジャズ界での名声を確立して行きますが、その後Impulseの親会社の方針で、ポピュラー路線強化が打ち出され、ロレツ・アレクサンドリアはこのレーベルとは残念ながら袂を分かつことになります。
その後はジャズ・クラブやコンサートでのライブ演奏活動等を続ける一方で、1970年代後半から1990年いかけて、DiscoveryやTrend and Muse等のレコード・レーベルと契約して何枚かのレコードを発表しますが、1993年にテナー・サクソフォン奏者ヒューストン・パースンらと共演したアルバム「Star Eyes」を発表した後に、心臓発作を起こし倒れ、その後も思う様に回復をせず、そのまま引退しカリフォルニア州郊外で療養していましたが、2001年に74年の生涯を終えました。
今回ご紹介するアルバム『Alexandria the Great(アレクサンドリア・ザ・グレート)』では、ロレツ・アレクサンドリアは、
ピアノに当時マイルス・デイヴィスとの共演等で既にジャズ界ではトップ・ピアニストの一人として評価が確立していたウイントン・ケリーを、ベース、ドラムにも同じくマイルス・デイビスとの共演で名高いベーシスト ポール・チェンバース、ドラマー・ジミー・コブ、そしてサクソフォン、フルートにはバッド・シャンク等の名手を迎え、また一部の曲ではオーケストラをバックに、持ち味の安定したテクニックで、伸びやかな歌唱を展開しています。
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ロレツ・アレクサンドリア
Lorez Alexandria
アレクサンドリア・ザ・グレート
Alexandria the Great
このアルバムは、ロレツ・アレクサンドラが1964年35歳の時に録音し、発表したアルバムです。曲の方は、ジャズ界では多くのアーティストが取り上げることの多い「Satin Doll(サティン・バドール)」「My One and Only Love(マイ・ワン・アンド・オンリーラブ)」等が収録されています。
BarBarBar音楽院は、長年ジャズの街横浜で、現役一流ジャズ・アーティストの講師陣によるレッスンを提供して参りましたが、今当院でジャズ・ヴォーカルや、ジャズ・ピアノ、ジャズ・ベース、ジャズ・ドラム、ジャズ・トランペット、ジャズ・サクソフォン等のレッスンを受けてけている方、そしてこれから当院でこれらのレッスンを受けようと思っている方には、このアルバムはジャズのスタンダード曲も数多く収録されていますので、参考用に是非お薦めしたいと思います。
<収録曲>
- Show Me
- I've Never Been In Love Before
- Satin Doll
- Over The Rainbow
- Get Me To The Church On Time
- The Best Is Yet To Come
- I've Grown Accustomed To His Face
- Give Me The Simple Life
- I'm Through With Love